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2023年10月11日

立川談春独演会in大宮

昨夜大宮のソニックホールで催された立川談春独演会はチケットの一般売りがなく、どうやら埼玉市民?県民?限定公演だったらしいのだが、お招きを戴いて翻訳家の松岡和子さんをお誘いしたのは以前に談春のオッカケをなさってたほどの大ファンだと伺っていたからである。今回の演題は三題で、通しのマクラは埼玉に特化したネタだし、最近話題の留守番=児童虐待なのか(!_+)といったトンデモ条例の話題はさすがに出なかったものの、さいたま芸術劇場がらみの話が出てくると、あれっ、さっき私たちが話してたのを聞かれちゃった?という気になるほど(゜;)とにかくマニアックな埼玉ネタの連投で聴衆のツカミがOKな感じになると、さっそく最初の演題お馴染みお花半七の「宮戸川」を披露。もっとも今回は長編話の前半だけだし、おまけに肝腎のお花半七よりも二人を家に泊めてやる叔父さん夫婦がフィーチャーされ、色恋をめぐる若さと老いの対比がみごとで、ことに叔父の妻がお婆さんになっても妙に可愛らしい色気のある感じは談春ならではの持ち味だろう。老夫婦に比べるといささか影の薄い若い二人だが、暗い夜道を半七にぴたりとくっついて叔父さんの家まで来るお花がほとんど口を利かないのに妙な存在感を発揮するのも面白かった。
二番目の演題「味噌蔵」は主人が異常なけちん坊であるケチ話だが、これも主人が留守した隙に飲み食いの大散在で日頃の鬱憤を晴らそうとする奉公人のほうがフィーチャーされて、中でも飲み食いの経費を帳面上のドガチャカで誤魔化そうとする番頭のキャラクターが極めてリアル立っているのはこの話のキモだったのかもしれない。
最後は大岡政談の「五貫裁き」で、これまた奉賀金(資金カンパ)を渋ったケチな金持ちのお話だけに、いささか前の演題とかぶる気もしなくはなかったが、両者の印象は非常に異なり、こちらは質屋と貧乏長屋の大家さんのいわば精神的な対立を軸にして、金持ち相手に意地を張る大家さんの一本筋の通った言い分は十分聞かせたし、気の遠くなるような歳月を要する大岡裁定の不条理さがリアルに感じられるあたりもまた談春ならではの世界だろう。総じて息もつかせぬスピーディな筋の運びとリアリティ溢れる人物描写で今日とは迂遠なはずの古典落語の世界にどっぷりと浸らせてもらい、且つゲラゲラ笑って健康寿命をう〜んと延ばしてもらえた、松岡さん共ども大変に幸せな一夜でした(*^^)v


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