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2023年07月15日

少女都市からの呼び声

一昨日新宿ミラノ座で観劇した唐十郎作・金守珍演出「少女都市からの呼び声」は、金守珍率いる新宿梁山泊の原点ともいうべき作品のようだが、今回わが本棚にあった唐十郎の戯曲集を改めて読み直してみたら、半世紀以上も前の1969年に上演された「少女都市」のセリフと全く変わらない部分が中核をなす戯曲であることに気づかされて、少しも古びないどころか現代を先取りしていたかのような唐ワールドにつくづく感じ入ったのである。ただし初期の作品らしい満州の幻想が濃厚なモチーフとされる点は現代の若い人たちに一体どう通じるのだろう?と考えさせられたし、他のちょっとしたクスグリのセリフも関ジャニ安田章大ファンでぎっしりと思しき客席にはイマイチ届いていない印象を受けたもので、そこらは商業演劇公演の難しさといったところだろうか。とにかく唐戯曲はへたな解釈や説明を受けつけない厖大なイメージの氾濫がリリシズムを帯びた唐ワールドであるだけに、「少女都市」と「〜からの呼び声」の大きな違いを一口で簡単にいうのも何だけれど、前者が肉体を壊れやすく透明なガラスに作りかえられた少女の話だとすれば、後者はその少女を自らの内側に取り込んだ男の物語であり、
そこがLGBTQの今日性とも妙に合致して面白く観られたし、安田章大の起用も肯けるものがあった。ミュージカル女優の咲妃みゆは普遍的な少女のイメージを前面に押し出した演技でそれなりに納得させられたし、少女の肉体をガラスに作りかえるフランケ醜態博士を三宅弘城がそこそこ面白く見せてくれた。ちなみに「少女都市」の初演でこの役を演じたのが麿赤児であるのを思うと、まさに隔世の感があるのは当然というべきか。またまたちなみに寺山修司主宰の「天井桟敷」が状況劇場の初日公演になんと葬式用の花輪を送りつけたことで、両劇団が大乱闘騒ぎになり9人が現行犯逮捕されるというアングラ劇時代の一大椿事を引き起こしたのもこの「少女都市」という作品でした(^0^;)


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