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2022年07月27日

能狂言「鬼滅の刃」

今日の午後は集英社文庫の伊藤さん、元担当の八代さんとご一緒に銀座の観世能楽堂で「鬼滅の刃」を観劇。この作品のアニメをワタシはAmazonプライムでちらっと見て、どうも絵柄に馴染めなかったために見続けられず、従って炭治郎と禰豆子以外は全く何も知らないで見たのだけれど、それなりに面白く見られたし、また会場でメジャーを占めた鬼滅ファンも終演後にアンケート用紙にびっしり書き込んでらっしゃる方が多かったので、それなりに満足なさったに違いないと思われたのである。鬼滅ファンがメジャーと見た理由はグッズ販売所の長蛇の行列と、会場で能舞台を写メしている人が大勢いたことで、これまで能楽に無関心で来た若い人たちを刺激できた点において大変成功した試みといえるかもしれない。とにかくこの作品を能狂言というスタイルで演ってみようと企図した野村萬斎の斬新な取り組みはさほど外れなかったように思うし、それを成り立たせたのは台本を書いた木ノ下歌舞伎の木ノ下裕一であろうと思う。全23巻からなる長大な原作コミックスからどの部分を抽出して2時間内の舞台にするかを考えるだけでも相当な苦労が想像されるが、感心したのはそれらをコンパクトな能とコミカルな狂言の組み合わせにしっかりまとめ上げているから見飽きないし、能楽師の演技や演奏に少しも違和感を抱かずに済むことで、改めて木ノ下の幅広い見識と才人ぶりを見せつけられた気がしたものである。炭治郎役の大槻裕一を始め可愛らしい若手能楽師の活躍もさることながら、重鎮の大槻文蔵が最後に舞台をきっちり締める演技を披露したのも大きいし、この作品のために新しく作られた能面の効果もよく出ていて、思いのほか歌舞伎よりも能楽堂での上演が似合っている作品に感じられたのは何よりでした。


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