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2016年05月13日

東海道四谷怪談

国立劇場で前進座が『東海道四谷怪談』を上演するのが34年ぶりだというのを知ってショックを受けたのは、その34年前の公演の際、私は当時ぴあ誌の嘱託ライターとして先代の河原崎國太郎さんにインタビュー取材をした覚えがあるからだった。人生ホントあっという間で悲しくなるが、1時間のお約束が2時間半にも及んだそのロングインタビューの内容を、私は既にほとんど忘れているのだから、これ以上長生きをしてもどんなもんだろう(¨;)という気がしている。ともあれ先代はインタビューで明解な理論武装をした主義者であるのが如実に判明したにもかかわらず、演じられたお岩様は歌右衛門の近代的なそれよりもはるかに古風な味わいがあって、可愛らしさが哀れさにつながるといった印象を受けたものだ。今回は孫に当たる二代目が演じて、こちらは古風というよりも現代風の可愛らしさを持ったお岩様で、嵐芳三郎の伊右衛門ともども現代の家庭崩壊劇を重ね合わせられるような等身大的な新鮮味があった。等身大的だからそれなりの哀れさはあっても、しかし怖さやおどろおどろしさはない。今回の上演台本では髪梳きが済んでから「もうこの上は気を揉み死に」のセリフになるが、せめてその件りからはもう少し手強い調子でやってもらいたい気がした。芳三郎は広也の頃から達者な人だったが、達者なだけに本来は伊右衛門のニンではなさそうで、見かけももう少しタッパが欲しいところ。退座した瀬川菊之丞が佐藤与茂七役で客演しているが、今回かなり若返ったメンバーでの公演だけに、この人が加わったことで舞台にに安定感が出た。さらに先輩格の藤川矢之輔が直助権兵衛に扮してコミカルな味わいを醸しつつ随所で高麗屋流の束見得を披露するなどして年季のほどを発揮。お袖やお梅を演じた若女形も結構な有望株として育ってきている。台本は全体的にスピーディ且つコンパクトに、それでいて端役のセリフからも筋がきっちり通るようにわかりやすくまとめられているのがいかにも前進座流であった。

ところで明日から岐阜県に出張のため、土日のブログ更新は休止し、16日(月)から再開します。岐阜出張は新幹線情報誌『ひととき』で美濃歌舞伎を取材するためで、詳細は帰宅後にお知らせ致しますので悪しからず<(_ _)>


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