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2015年12月16日
京都日帰り行
昨日15日は「井上八千代さんの人間国宝認定を祝う会」に出席のため京都に日帰り旅行を敢行。別に売れっ子作家でもあるまいに、と思いながらも車中MacBook Airでずっと原稿を書き続けるなどして少し早めに京都入りし、会場ホテルの喫茶室で妹と1時間ほど喋って会場入り。入口の左右にずら〜と舞妓さん芸妓さんが並んだ様(写真は片側だけ)にまず度肝を抜かれ、場内では千人ほどが丸テーブルを囲んだ着席パーティだったこともかなり予想外だった。京都人は誰しもふだんジミ〜だったり、ダラ〜っとしてたりしても、ヤル時はやりまっせえ!的な気質を多分に備えているが、今回ははまさに祇園町全体のヤル気が窺えた感じだろうか。フルコースの料理に加えて滅多に見られない芸妓さんたちの手打ち式や片山九郎右衛門師の「猩々」といったアトラクションが入り、人間国宝になられたご本人はもとより知事以下来賓の挨拶もすっきりとして全体の進行が緊密に運んだ近年稀に見る立派な会だったように思う。テーブルの横に座った元松竹専務の大沼氏が「ここで今テロが起きたら日本の古典芸能は壊滅ですね〜」と言われたくらい沢山の関係者が列席されるなか、八千代師自らこちらにまでご挨拶に来られると下手に身動きもならず、途中で抜けだすのも難しくなって、一応は〆のご挨拶を聞くや否や会場を飛びだしてようやく新幹線だけを使っての大宮帰着が叶ったのは幸いだったが、おかげで挨拶をしそびれた方が何人もあって失礼しました。
ところで今回の京都行でショックを受けたのは妹に「お姉ちゃん知らんかったん!」と逆に驚かれながら初めて知った杉本章子さんの訃報である。宇江佐真理さんの訃報も自馬持ちのAさんに教えられてやっと知ったのだが、今回もまた担当編集者が誰も教えてくれなかったのは何か理由があるのだろうかとヘンに勘繰りたくなるくらいだけれど、一番の問題はこの間の私が新聞も読まなかったことにありそうだ。 共に時代小説を書いているというだけで、杉本さんとも全く面識はなかったのだが、同い年の方だけにショックは大きい。もっとも、あちらは早くに直木賞を受賞された大先輩であり、私はその昔新人物往来社から出版された「妖花」がとても若書きとは思えぬオトナの味わいだし且つ潔い文体が魅力的な素晴らしい作品だと脱帽し、いつかお目にかかる機会はないものかとずっと思っていて、そのことは文春の以前の担当である内山さんによく話していたのに、とうとう叶わず仕舞いになったのが残念でならない。それにしても宇江佐さんにしろ杉本さんにしろ同世代の同業者がこんなに早く立て続けに逝かれるとは想ってもみず、にわかには信じ難い気がしている。私たちの世代で癌に斃れる方が多いのも前から気になっていて、とても他人事とは思えず、私とていつ何どき召されるかもわからない年齢になっているのは確かなだけに、今はただ安らかな御冥福を心よりお祈り申しあげるのみだ。
コメント (1)
杉本章子さんの訃報は大きな衝撃でした。今年、雑誌の対談で病状を知って、少しでも長らえます様に…と願ってましたが、叶わず、何とも惜しい方を失くしました。「新東京大橋雨中図」で小林清親を知り、「間諜 洋妾おむら」で幕末史の一面を垣間見、どの作品も筋の面白さ、人物の魅力、時代背景の確かさは格別で、信太郎人情始末帖シリーズは終わるのが残念で最終巻は読まずにいました。寡作でしたが、珠玉の作品ばかりで、心よりご冥福をお祈りいたします。
投稿者 ウサコの母 : 2015年12月17日 21:27