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2015年01月22日
ハムレット
さいたま芸術劇場できょう初日を迎えた「ハムレット」は病休明けの蜷川演出とあって心配された方も多かったのだろう、いつになく俳優や関係者が客席にどっと押し寄せ、舞台も良い意味で緊張感をもって進行し、4時間という上演時間の長さを全く感じさせなかった。何しろ主演の藤原竜也が幕開きからただならぬハイテンションで激情型のハムレットを演じ、そうした部分のセリフはやや一本調子に流れて聞きづらい部分もあったのは否めないとはいえ、内省的なセリフはスタイリッシュに聞こえたし、オフィーリアやレアティーズやフォーティンブラスも含めて、芝居全体が親世代の価値観に引きずられた若者達の悲劇といったニュアンスを前面に打ち出したものと感じさせた。有名な「生きるべきか死ぬべきか」のセリフは舞台を歩かせながら煩悶の独り言風にごくさりげなく言わせる一方で、意外なセリフを正面切らせてメタフォリカルに伝えさせるなど、新たな解釈による演出の主張もそれなりに納得させられた部分がある。たかお鷹のポローニャスを始め蜷川チームの達者な脇役陣が健在だからコミカルなシーンも十分に楽しめる。ただし役者自身の力量によって、この芝居全体のバランスを欠くまでの異常な存在感を発揮するのはやはり平幹二朗演じる敵役のクローディアスであろう。かつてのハムレット役者がクローディアスを演じた例が過去の世界演劇史上にあるのかどうかは知らないが、とにかくこんなにクローディアスに注目せざるを得ない「ハムレット」の舞台を見るのは後にも先にもないことを確信した。海外上演を控えているせいか能囃子など和調の効果音が多用され、「唐版滝の白糸」の舞台などで知られる長屋の装置を使い回ししている、正直いってこの装置は効果的に用いられている感じはしなかった。