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2014年05月30日
出雲・石見行3
出雲と松江だけでもまだまだ見るべきものを沢山残しつつ、講演終了後はすぐ有福温泉に向かって旅館「樋口」に投宿。ここは俗悪な雰囲気が全くない良い意味で鄙びた温泉地であり、団体客をいっさい取らない樋口は各個室に露天風呂を設けた実に贅沢なお宿である。おまけに日本海の新鮮な魚を使ったお造りや、石見牛のステーキなど山海の素材に恵まれた料理が実にオイシイ!ことに年間二百頭しか出荷されないという石見牛の旨さは格別で、これを食べるだけでもまた訪れる価値があるように思えたくらいだ。というわけで前日来、魚介と牛肉の双方をたっぷり食べ過ぎて体重計の目盛りに愕然とするなかで、 29 日は午前中からたっぷり五時間かけて石見銀山を見てまわった。
ここが世界遺産に認定されたのは、最盛期に世界の銀の三分の一も産出し、いわば世界の経済活動の原動力となっていた点もさることながら、鉱山でありながら今なお豊かな緑に恵まれている点、すなわち製錬のための火力需要で周辺の樹木を多く伐採したにもかかわらず、絶えず植林を行って環境の保全に努めていたことが高く評価されたのだという話をガイドさんから伺って、日本人らしい評価のされ方だったことを嬉しく感じた。最盛期には二十万人もの人たちが暮らしていたとされる町並みも今に保全されていて、釉薬に彩られた昔ながらの赤瓦を光らせている。昼食をはさんで六キロほど歩いたものの、涼しい風と鮮やかな新緑に恵まれて疲れはまったく感じなかった。ただ、ここに来るまでの時間が結構かかるのと交通手段が便利とはいいがたいため、私も今回の機会を得てようやく訪れることが叶ったわけなので、出雲講演のオファーを戴いた田村さんと石見銀山までご同行を願った伊藤さんには大いに感謝である。
ところで今回ちょっとおかしかったのは、どうやら出雲で仏教のどこかの宗派の大会があったらしく、往き帰りの飛行機でお坊さんの団体と一緒になったことである。出雲大社でも大勢のお坊さんの参拝姿が見受けられたのはともかくも、バードウオッチャーの伊藤さんが目ざとく見つけて「あっ!お坊さんもお守りを買うんだ〜」と叫ばれたのには思わず笑ってしまいました(^○^)
写真上段は明治に建造された銀の製錬所跡で草蒸して苔に覆われている。中段は間歩(まぶ)と呼ばれる坑道跡。大きな坑道は中にも入れる。写真だと暗くてわかりずらいために敢えてアップはしなかったが、中は天然クーラーがきいて非常に気持ちが良い。下段は銀山で出来た町、大森町のメインストリート。保全に気を遣って自販機まで木の覆いがされている。