トップページ > 寄せ鍋
2014年02月12日
寄せ鍋
園芸ライターの光武さんから突然ご連絡があって、北本のご実家からの帰りがけにわが家へお立ち寄りになり、久々に晩ご飯をご一緒した次第。
「今日は松井さんと大切な話をしなくちゃいけないと思って来たんですよ」と来られた早々マジな声で仰言るので、一体何事かと思ったら「ケンチュウゾウカンをネタにしたら、今どんな本でも売れるっていうんですよね」と聞かされても最初は (?_?)エ? という感じだったのだけれど、要するにそれは「嫌中憎韓」のことで、今や書店でもその手のコーナーができているのだとか。光武さんの友人の中にもその手の本を某大手出版社から出して16万部も売上げている方があるのだそうで、光武さんはだんだん怖くなってきて「 親に訊いたんですよ。ねえ、戦争が始まる前ってどんなだったの?って。パールハーバーで戦争が始まったって感じたのか、それともその前から戦争をしてる感じだったのかって。そしたら、うちの親たちはもう物心ついた時からずっと日本は戦争してる感じだったっていうんですけどね」と、いささか飛躍があり過ぎるような心配までなさっていたのであるが、それにしても都知事選でタモガミ氏が若年層の支持をかなり受けていたことも含めて、急速にきな臭いムードが漂いだしているのは事実のようである。で、光武さんがその友人の本を読んでみると、全体的に日本が諸外国からこんなにバカにされてていいのかという論調らしいのだが、「こんな些細なことにひっかかって書くほうも書くほうだし、それを読んでそうだと思う人が沢山いるというのもフシギで、一体いつから日本人はこんなに自信をなくしちゃったんだろう?って逆に思ったんですよね」とのこと。まあ確かにいかなる共同体も他を攻撃する際は、まず被害妄想を内部に浸透させるという点では、オウムも北朝鮮も戦前の日本も同じ穴のムジナであるからして、たとえば日本が東アジアで孤立を深めているというふうに欧米に認識されて且つそれを非難されているというふうな被害妄想的論調がはびこり始めるとそれは大いに困ったもんなのである。何よりも問題なのは、そうした論調をはびこらせる報道機関や出版社であり、光武さんの友人も、別に始めからそんなふうな本を出したいという気持ちがあったわけではないにもかかわらず、編集者の要請でどんどんそんな風に書かされてしまうらしく、恐らくはそうしたほうが売れるという出版社の金もうけとしての判断がそこには働いているのだろう。世の中の言説は結局そんな風に回ってゆくということを心すべきなのだが、そうした警戒心が働く人はそもそも最初からそんなことにはひっかからないわけで、やっぱり人類はいつの時代もバカは死ななきゃ治らないという浪花節的な落とし穴を避けられないというべきだろうか。でもって、私も光武さんも年齢的に自分たちはどうせあと20年も生きてるかどうかわからないわけだし、おまけに子供もいないから、もうこの先の日本がどうなろうが知ったことか!と開き直れたりもしてしまえるわけで、時代の変わり目にあって、そうした無責任なオトナが増えてることも、やっぱり問題だよね〜とお互い反省もせずにはいられなかったのであります。
コメント (4)
毎日のマメ日記を感心しながら楽しく読ませて頂いています。松井さんの本のファンで、つい数日前も銀座開化~3巻を読み返し、同じところで憤慨し、同じように泣きました。
私は音楽家ですが、実家は日本橋出でして、銀座界隈の話は他人事ではございません。ましてや十字屋、原胤昭と来れば尚のこと心躍るのでございます。話が長くなりましたが、これからも楽しませてくださいなまし。
投稿者 榊原 徹 : 2014年02月13日 00:08
無知と無関心が一番問題なのかもしれません。太平洋戦争もホロコーストも気が付いた時にはもう手遅れだったのではと推測します。
偏った情報だけを鵜呑みにして、他国の悪口を言う人が増えているのは恐ろしい世の中です。社会や家庭、学校で他者に敬意をはらうことを教えればもっと良い世になると思うのですが。
投稿者 tucci : 2014年02月13日 12:28
tucciさん「他者に敬意を払う」良い言葉ですし、今文科省が考えている「道徳教育」はここから始めるべきですが、今の安倍政権下では全くそんな気配すらもありませんね。子供の頃よく年よりから言われました「他者を見て自分を省みよ」今の北朝鮮と似たような事をつい67年前に日本もやっていたのに、日本の出版社は忘れてるようで隣国の上げ足取りを記事にして若い層を煽る。
私は上方者で関東の大学については全く存じ上げませんが、埼玉大学って人間宣言なさってる今上陛下を又神にして自分達の思うように祭り上げる人が名誉教授、何を教えてる大学ですか?
一番迷惑されるのは今上陛下御夫婦だと思いますが。
投稿者 お : 2014年02月13日 16:22
あら、ここでご町内の榊原徹さんのコメントを読むとは。
顔の見える個人対個人だとヘイトスピーチなどできないだろうとおもうのに、集団や匿名になると出来てしまう人間の弱さがこわいです。辛淑玉さんの元へ届いたというメールの内容を本人の口からきいて、こんな醜い愚かな言葉を吐く人が同じ国民であることが悲しく情けなくなりました。まずは自分達の言動を「敬意を払われるにふさわしい」ものにしてからでないと始まらないと思います。
60-70年で教訓を忘却するほど、人類を馬鹿だと思いたくないのですが。
投稿者 田坂州代 : 2014年02月13日 20:25