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2013年11月02日

海老チリ、八宝菜、腸詰め、ピータンほか

下北沢の「劇」小劇場でイヨネスコ作「まくべっと」を観た帰りにこの芝居の翻訳・演出・主演を兼ねた中村まり子さんと翻訳家の松岡和子さんと近所の中華料理店「雪園」で会食。
この作品は「マクベス」のパロディとは聞いていたが、何せ不条理作家のイヨネスコだから、もっとムチャクチャな話なのかと思いきや、意外とまっとうにマクベスのストーリーが展開するのだけれど、そこにいかにもイヨネスコらしい「権力」の構造に対する批判的な眼差しが活かされており、ダンカン王の悪政に対する革命を試みるかに見えるマクベットや、マクベットを滅ぼすバンコーの息子も所詮は「権力」奪取の連鎖に過ぎないという皮肉な現実がくっきりと浮かびあがる仕掛けだ。こんな風に書くと何だかお堅い芝居のようだが、決してそうではなくて、随所におかしな筋立てやら、不思議なシーンやら、とんでもないセリフが存分に盛り込まれて結構笑わせてくれる作品なのだった。中村まり子は翻訳ばかりでなく現代性を持たせた書き替えも相当に行って、現代ニッポンに対する風刺も利かせている。マクベットとバンコーを若手俳優にし、佐藤輝や中島久之や田村連といったベテラン勢を脇に配したキャスティングもパロディ作品としての効果を大いに高めていたように思う。ご本人はダンカン王妃と魔女とマクベット夫人というオイシイ役をかっさらって、この歳でこういう役をやるとやっぱりキツイというような楽屋落ちのセリフまで聞かせるところが、さすがに自主プロデュースならではの公演とはいえ、全体にテンポが良くてだれる箇所はなく、男女優ベテラン若手を含め役者陣に好感が持てる舞台に仕上がっていたのはお手柄だろう。


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