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2012年06月26日
竹本綾之助叙勲記念女流義太夫演奏会
近作の拙著『星と輝き花と咲き』でモデルにした竹本綾之助は当代で四代を数え、その四代目の旭日双光章受章と、初代の没後七十年を記念した女流義太夫演奏会にご招待を戴いて、今日は執筆が一区切りついたところで大急ぎで身仕度と食事を済ませて国立演芸場へ。ほぼ満杯の盛況の中めでたく三番叟の演奏で幕を開け、第一人者の人間国宝竹本駒之助を筆頭に太夫、三味線、鳴物全員女性の十六名がずらり舞台に居並んださまはそれだけでも壮観だし、これまで素浄瑠璃で聴く機会がなかったため、後半テンポよく盛り上がっていくこの曲自体の面白さを今回はよりハッキリと感じられて存分に楽しませてもらった。
このあと女義研究家のこれまた第一人者である水野悠子氏による「歴代竹本綾之助について」の講演があり、AKBの総選挙のようなことがすでに明治大正期にあったというような現代人にピンと来やすい導入から、初代と二代目が不和だったという報道は当時のマスコミの捏造だった可能性もあるというような資料を駆使したマニアックな研究成果まで、淡々とした口調の中に濃い内容がギッシリ詰まったお話を大変面白く聴かせてもらった。
大切りは当代竹本綾之助による『烏帽子折莩源氏』「伏見の里の段」という大変めずらしい近松物の復活曲で、近松門左衛門の中でも初期の作品だけに、古浄瑠璃風の大らかな味わいのある時代物である。亡き義朝の遺児今若、乙若、牛若の三兄弟と共に哀しい苦労を重ねて放浪する常盤御前を描いたお話で、この幼い兄弟たちが後に頼朝、範頼、義経になって源氏を再興するという予言が劇中でなされる点で祝儀演目にふさわしい曲だ。前半は語り手にも苦労の多い渋いフシまわしの連続で、厳しい寒空のなか常盤と幼子が悲惨な苦労を強いられる哀切なシーンが描かれ、後半は三兄弟をそれと知りながら見逃してやる平家の弥平兵衛宗清と、彼を敵としながらその恩情ある裁きに感じ入って礼を述べる藤九郎盛長の大らかな人物像の登場がすがすがしく、暗い場面から一転して明るい光が射し込むようなラストがとても印象的だ。渋い演目ながら、当代綾之助師は上品で爽やかな語り口の中にも暖かみのある芸の持ち主だから、この作品の持ち味を巧く伝えることに成功し、また三味線の津賀花もそれぞれの情景の描写が的確で健闘している。正直ここまで面白く聴けるとは思わなかった作品だけに、改めて綾之助師の精進に敬意を表したい。場内でバッタリお会いした現代人形劇センターの塚田さんも、事前に越路太夫の録音を聴いて今回の公演に臨まれて、想像以上の出来映えにとても感心をなさっていた。
また場内では拙著も販売され、講演中に水野氏が宣伝を、またロビーでは鶴澤寛也さんが販売をしてくださるなどして売上げにご協力を戴き感謝に堪えませんm(__)m
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コメント (1)
綾之助さんの記念演奏会はどこで行われるのでしょうか。チケットはどこで手に入りますか教えてほしい。福岡
投稿者 福岡清 : 2014年02月28日 11:56