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2011年03月16日

サバイバル

今日は夕方から池袋の東京芸術劇場で野田マップの「南へ」を見る前に近所で食事。芝居よりも、地震以来初めて見た町の雰囲気がちょっと異常なことに驚いて帰宅した次第。
帰宅したら、電話やメールが続々と来て、いずれも早く関西へ逃げたほうがいいというような内容で、町の雰囲気と合わせて、なんだかみんな集団ヒステリー状態なのではなかろうか?という気もしている。町が異様なのはやはり節電による営業自粛が大いに関係しているだろうし、駅売りしてるタブロイド紙の見出しや週刊誌の中吊り広告を見て、マスコミの煽り方も相当なものだと思ってしまった。これでずっとTVを見てたりしたら、そりゃヒステリーにもなるわなあという感じで、もちろん絶えず地面がぐらぐらしてることが一番精神状態によくないのはいうまでもない。
私も今日出かける際はスニーカーにリュックスタイルで帰宅難民になることも想定し、下着や軍手、歯ブラシ、ヘルメットまで持参したくらいで、なにしろ不要不急の用事で出かけて、アクシデントに遭遇したら同情の余地なしだから、できるだけサバイバルの用意はして行ったのだけれど、だからといって関西に逃げるというような発想には、とても辿り着かないのである。なぜなんだろう?と自分でも思うのだが、 昔から集団ヒステリーみたいなのがとても苦手で、みんなが南に逃げたら独りで北に逃げたいようなタイプだからかもしれない。要はまあ、へそ曲がりなのだろう。
今朝は初めて京都の父親から電話があって、以前「川上」の従業員で郡山で商売をしていた人とやっと連絡がついてホッとしたが、店は全壊したことを気の毒がっていて、TVを見ていてもあまりのことに胸が詰まるし、「もう日本はほんまにおしまいやなあ」と涙声で言うのを聞いて私も思わず一緒に泣いてしまったが、京都に帰って来いなどとはひと言もいわなかった。そこらは戦争体験者だから、人間いつどこで最期を迎えるか、いつ別れが来るかというようなことに関して、ある意味で肚がすわっているのだろうと思う。ちなみに関西は関西で、これも地震がよくある福井の原発をとても恐れているという話であり、とにかく地震はどこで起きるかわからないから、ほんまにジタバタしてもしょがない、と互いに言い合ったものである。
今日の芝居では主宰者の野田秀樹が開演前の挨拶で、被災地に今後もっとも積極的に経済的な支援をしなくてはならないはずの東京が異様な自粛ムードに煽られていることを警告し、劇場の灯を消してはならないとして公演を持続する旨の発言をしたのは実にもっともであった。ただし肝腎の芝居のほうは富士山の噴火をモチーフにした内容があまりにもタイミングとして問題があり、演じる役者たちも気の毒だし、見るほうも辛い気分にさせられたのは如何ともしがたいけれど、公演収入は義援金にまわされるそうで、興行は昔から災害時にこうした義捐活動を積極的に行うのである。もちろん募金箱も用意されていた。
芝居に 同行した坪池さんは財団法人「地域創造」の機関誌でちょうど東北方面の取材をした直後に今度の地震があったため非常にショックが大きかったらしい。現在は被災者の安否が心配されるけれど、阪神大震災を上回る被災地の惨状を見て、今後の復興を想うと気が遠くなるという話を私がしたら、「でも松井さん、私は昭和30年に広島に生まれてるんだよね。10年経てば、あの広島が完全に蘇ってたんだよ」と言われたことが、今日は一番の救いだった気がします。


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コメント (5)


JR大阪駅は東から避難された方々で大混乱だと言うと、
東京駅は西へ避難する人々で溢れかえっていると友人が。

>ふだんこのブログで自分が見た芝居のこと好き勝手書いてるわけなので、こんな時に背中は見せられない

↑かっこいいです!「いよっ 松井屋っ!!!」
(不謹慎でしたら、すみません)

投稿者 waysea : 2011年03月17日 00:33

松井今朝子様。はじめてコメント致します。
以前からファンでしたがなかなかコメントする勇気がありませんでした。
>集団ヒステリー
まさにそうだと思います。海外メディアも煽りすぎ。日本への渡航を禁止する国もあるし。
私も松井さんを見習って、日本経済を少しでも回して行く為、午後から観劇に行ってきます。もちろん、万全の備えをしてですね。

投稿者 yuri : 2011年03月17日 12:58

日曜日の新橋演舞場は5~6割の入りでした。ふだんは歌舞伎感劇では拍手しない主義(自然に出る場合は別として)ですが、日曜日はいろんな思いをこめて拍手を送りました。土曜日のチケットもあったのですが公演中止となったので、この週末に振り替えました。人間どこにいようと天命がつきるまでなので、できる範囲で自分のやりたいことに向かいたいと思います。

投稿者 yo : 2011年03月17日 20:00

14日国立の切符を買ってあり、妹一家の安否が不明なら歌舞伎どころでなかったのですが、前の晩、全員の無事が分かり、ひとまず安堵、出かけました。昨秋以来、待ちわびた仁左衛門さんの舞台、見どころタップリの出ずっぱり、悪の二役で、時代と世話、両方楽しめて、素晴らしく見応えがあり、1等席にした甲斐がありました。1階は3・4割の入りで、ロビーも人が少なく、大向こうも女性が1人だけで、観客が少なく、拍手もまばらに感じられました。
被災した妹達は、無事と言っても家は半壊で避難所暮し、TVは胸が締め付けられる場面ばかりで、後ろめたい想いもありましたが、しばしの間、重苦しい心を遊ばせることができ、これぞカタルシス、と満足感で帰途に着きました。大詰、仁左衛門演じる大悪人が討たれた後、直っての口上で「今日はこれ切りと言うところ、「今月はこれ切り」と聞こえたものの、聞き間違いだろう、と思っていたら、帰宅して、上演中止と知りました。歌舞伎座の閉場以来、久々の素晴らしい舞台で、初日から大評判でしたし、多くの歌舞伎ファンが失望していることでしょう。上演中も(ここで、大地震が来たら……)と思いましたが、己の意思での選択ですし、演劇や音楽、文学など、心の活性化に大きく作用する力があるはずです。

投稿者 ウサコの母 : 2011年03月17日 22:32

本日、計画停電でした。
真っ暗な中、やはり不安で、懐中電灯で照らして
「銀座開花おもかげ草紙」読んでいました。
サンタクロスのところでは、自分の置かれている状況も
忘れて笑っていました・・・
小説って、すばらしい・・・と、ふと
我に返って思いました。
これからも、今朝子さま作品にたくさん
パワーをいただくことになりそうです。
感謝です!

投稿者 彩の女 : 2011年03月17日 23:55

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