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2011年03月14日

ふつうの生活

東京電力の支配下にある皆さん、いかがお過ごしですか?私の住んでる町は計画停電のグループ分けが今日になっても不明瞭で、PCで原稿を書きながら何度も保存をかけたりして、結局実施されなかったので拍子抜けもいいところだが、各企業と家庭の自主的な節電でこんなに容易く減量がクリアできるんなら、ある意味で究極のエコ政策ともいえて、今後いろんなことを見直すいいきっかけになるかもしれない。なぞと思えるのは所詮、居職だからで、通勤の方々は大変なご苦労を、被災地のことを想って我慢なさったのだろうと想像する。電車までストップするとはあまりにも意想外だったし、まるで戒厳令下にあるような状態なので、福島原発の最悪事態や巨大地震の連続を予想しての対策だろうか、と勘ぐってしまったほどだ。夜になっても福島原発の第2号機があわやメルトダウンかというような報道がなされて肝が冷えた。
今日わが家をお訪ねになるはずだった講談社の堀さんから電話があって「本当に先がまったく見えないですもんねえ。いろんなことがわかってくればくるほど暗い気持ちになりますし。このまま状況がどんどん悪くなってくようだったら、京都に一度お帰りになることをお考えになってもいいんじゃないですか」と、親切に仰有ってくださったが、今のところこの土地を離れるつもりは全くない。ここで最期を迎えたっていい覚悟である。大宮は東北の玄関口のような町であるらしく、東北地方のさまざまな物産やイベントに触れる機会がとても多かったし、ことに最近は青森新幹線開通で沸き立っていただけに、その落差があまりにも痛ましく、何としても再び立ちあがられることを、この地でしっかりと見届けたいと思うのである。
午後は新潮社の小林姐さんからメールがあって、毎月「なべ家」で催す会食のお仕事を、やはりこの17日に決行しましょうとのこと。「江戸のもてなし」なぞというタイトルのエッセイが、こんな時に必要なのかと問われたら、絶対に必要だとは答えられない。しかしどんな時でも、私たちは私たちの仕事を淡々とこなし、それなりの経済活動をして、しっかりと税金を払うことこそが、結果として被災地の復興につながるのを願うしかないのである。
この間、電力需要の問題から大劇場が閉鎖になったのはやむを得ないにしても、不要不急の事以外は排撃するような風潮は、それこそ「贅沢は敵だ」という戦時中の民度に逆戻りするようだし、断じて避けたいものである。世の中には大勢の役者さんやお笑いの芸人さん、われわれ物書きやイベント屋さんや、それこそ絶対に必要かといわれたらそうでもない仕事をしてる人だって沢山いるわけだし、こういうときは、こんな仕事をしてていいんだろうかと迷う時もあるだろうけれど、どんな時も浮き足立つことなく自分の一番できることや、これしかできないと思うことを、とにかくしっかりやり続けるのが、生きている者の務めだと私は思うのです。
というわけで、今日は停電がないとわかった午後から執筆にかなり集中できたのはいいのだけれど、夕方になって近所のスーパーに行ったら、食料がほとんど無くなっていて、チョリソーとアスパラガスの炒め物しかできず、私的にはふつうの晩ご飯が作れなかったのはとても残念でした。


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コメント (4)


松井さん、初めてコメント致します。
ご著書とブログを楽しんでいます。
わたしは中越地震の被災者の家族で、
当時地震の翌週に現地入りしました。
今回の地震の余りの被害の大きさに胸が詰まります。
でも私も、無事な地に暮らす者は、
通常通りの生活を送りながら、
何か出来る支援が見つかった時に、
無理なく出来る事を行えば良いと思っています。
なので、連日の辛い報道だけのテレビに疑問を感じます。
被災地以外でも余震で怖い思いをしている幼い子供たちや、
不安を感じている人たちの気持ちをほぐす様な、
そんな放送を行う時間もあっても良いのではないでしょうか?
常識的な内容ならば、お笑いや歌、アニメ、お芝居、映画、
辛い現実を少しの時間だけ考えなくてすむ様な、
そんな放送もあっても良いのではないでしょうか。
小説だって、そんな人達への力になると思います。
人は命に必要な事だけで生きていくのは辛いと思います。
もちろん今は、まず命の安心が第一です。
でももう少し時間が経ったときに、
生活再建で頑張らなければいけない時には、
また今とは違う厳しい現実に向き合う事もあります。
心の疲れをほぐし、力となる様な楽しみも必要です。
被災者だけでなく、離れて暮らす人の中にも、
大切な人や大切な何かを失って辛い人もいます。
私と違う意見の方もいらっしゃると思います。
でも私は松井さんや作家さん、役者さん始め、
芸術家さんや様々な方達の力は
求められていると思います。
無事な私達が過剰に委縮して暮らしてしまうと、
被災地の方々も楽しい事を求めづらくなる一面も
あるのでは、と思っています。
様々な楽しみを提供する事を控えずに、
求められた時に楽しみを充分に提供する様なお気持ちで
いらして頂きたいと思います。
節電の為、パソコンを使う事が悪のような風潮にも疑問です。
暖房を切りテレビを点けないなど、
その方なりの節電が出来れば、
それで良いと思っています。
松井さんがお書きになられた様に、
良い方向へ社会の心が変わる事を願います。
松井さんのブログの言葉が嬉しく、
感情的な読みづらい文章になりました。
長々と申し訳ありません。
また、私のコメントを読んで、
気分を害された方にはお詫び致します。

投稿者 akiyama : 2011年03月15日 11:57

いつもブログをたのしく拝見させていただいております。
今日国立劇場から主催興行とりやめ、チケット代金払い戻しの案内がメールで届きました。主催者側の払い戻しの手間や時間はもちろん自分の時間ロスや、交通費を考えると“希望者”についてはそれを返却せずに災害募金として取り扱ってもらえたら嬉しいと思い、メールしてみたのですが、これを実行に移すことは困難との返信でした。返金作業は社会的にみても大きなロスだと思うのですが残念です。4月には義母のためにチケットを取っています、後衛部隊?の元気維持のために流れませんようにと祈るばかりです。

投稿者 OGA : 2011年03月15日 16:41

いつもブログをたのしく拝見させていただいております。
今日国立劇場から主催興行とりやめ、チケット代金払い戻しの案内がメールで届きました。主催者側の払い戻しの手間や時間はもちろん自分の時間ロスや、交通費を考えると“希望者”についてはそれを返却せずに災害募金として取り扱ってもらえたら嬉しいと思い、メールしてみたのですが、これを実行に移すことは困難との返信でした。返金作業は社会的にみても大きなロスだと思うのですが残念です。4月には義母のためにチケットを取っています、後衛部隊?の元気維持のために流れませんようにと祈るばかりです。

投稿者 OGA : 2011年03月15日 16:42

11日は観劇で国立劇場へ向かう途中、表参道のアンデルセン地下で地震にあいました。表参道から徒歩で東京駅へ向かい、翌日の14時にやっと高崎駅へ到着しました。一夜を過ごした東京駅の新幹線待合室では座席を高齢者に譲ったり、小さなお子さんの寝るスペースを確保したり、当たり前のことをお互いに淡々とおこなっていました。翌日の地下鉄・JRは未だかつて経験したことのない大混雑でしたが混乱やパニックはなく、日本人の民度の高さを感じました。akiyamaさんのおっしゃるとおり通常の生活の中で自分のできることをやっていきたいと思います。なお、チケットの返金分、新幹線特急券の払い戻し分に加え、確定申告の還付金を被災地に募金するつもりです。

投稿者 はな子 : 2011年03月15日 17:06

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