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2011年01月29日
VARIO
今日は天気予報で全国的に一段と冷え込みが強まるといってたのに、埼玉は意外な好天と暖かさに恵まれ、午後から乗馬クラブに行って1鞍騎乗しただけでどっと汗が噴きだした。そのあと翻訳家の松岡和子さんと大宮でお会いして、わが家の近所にあるイタ飯「ヴァーリオ」で晩ご飯をご一緒する。生ハムとサツマイモのサラダ、カジキマグロのエスカベッシュ、浅蜊とフレッシュトマトのスパゲティ、カルボナーラフィットチーネ、平目のグリル、羊のローストなど、どれもそこそこ美味しくリーズナブルに戴けて、またも住まいの近所に使い勝手の良い店を発見したという感じだ。
松岡さんはさいたま芸術劇場で「コンドルズ」のダンスをご覧になった帰りにお立ち寄りくださったのだが、
三軒茶屋にいる時は自宅がご近所だった関係でよくお茶したりもしてたのだけれど、「まさか大宮で会食するなんて、お互い想像もしなかった!!!ですよね~」と別れ際に言い合うはめになる。そもそもは文化出版社の雑誌の鼎談で初めてお会いし、その後劇場でもよくお見かけしてたものの、私が急接近したきっかけはやっぱり乗馬をなさっていることにある。乗馬キャリアは私よりずっと豊富で、自馬(マイ・ホース)までお持ちなのに、御殿場にある所属クラブの馬場が凍結しやすいためか、「今年はまだ1度も乗れてないのよ~」とお嘆きになるのは確かにお気の毒でした。
ところで松岡さんはその昔、劇団「雲」で福田恆存(つねあり)の秘書を務めていらしたという過去があって、福田氏は演出家としても翻訳家としても評論家としても戦後を代表する演劇人のひとりだが、その福田氏がわが師の武智鉄二氏と昭和三〇年代の「文学界」で大論争を巻き起こしたという事件を知って、松岡さんとはますます不思議なご縁を感じる今日この頃である。
武智VS福田の論争は、今年になって水曜社から刊行された森彰英著の「武智鉄二という藝術」に詳しく、この本は入念な調査に基づいて武智師の万華鏡のごとく多彩でかつ中心の見えない活動を追い、それについて極めて客観的な論評を試みている点で、多少の誤謬はあっても現段階では最も信頼に足る武智師の評伝といってもいいように思うが、私自身は著者から武智師のことについて何ら問い合わせを受けたわけでもなかった。それゆえある意味で油断して読んでいたら、最後の章になって残り10頁くらいの段階で、いきなり自分の話が出てきて、しかも著者と実は過去に面識があったことまで知らされたので、まさに不意打ちのパンチを喰らったように狼狽えてしまった。ベッドの中で読んでいたら、頭がか~っとなってひと晩よく眠れなかったという話をしたら、松岡さんも自ら本を取ってその箇所をお読みになり、「たしかにこれは興奮して当然だわねえ」と仰言ったのでのである。別に悪く書かれているわけでは全然ないし、むしろ好意的に書いて戴いているので感謝してもいいくらいなのだけれど、やはり物書きとしては、常に他人を見て書く側にまわっているから、無意識の自分を他人に見られて書かれてしまったというショックが大きかったのだろう。とにかく私にとっては、人間悪いことはできないもんだと妙に痛感させられた本でもありました(^_^ヾ
松岡さんからは昨年末のさいたまネクストシアター公演「美しきものの伝説」がすばらしかった!!!というお話を聞いて、見損なった私は再演を大いに期待しております。
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