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2009年12月07日
猪の炭火焼き、フォアグラの串焼き、そいのカルパチョ、野菜のマリネほか
歌舞伎座の昼の部を見た帰りにPメディアの三村さんと有楽町のヴァンピックルで食事。
昼の部のお目当ては言わずと知れた宮藤官九郎の新作「大江戸りびんぐでっど」だが、これが良い意味でも悪い意味でも、ある程度期待通りというか、想像に違わない出来だった。これからご覧になる方もあると思うのであまり詳しくは書かないけれど、クドカンおハコのゾンビ物で、すでに死んでるからどんなキケンな仕事でもさせられるゾンビをハケンにするという設定を筆頭に、毒気の強いギャグがきいた作風を押し通したのはごリッパながら、歌舞伎座の客層をあまりにも無視しているような気がするし、またそうした観客の前で演じてギャグが滑ってしまう役者にとってもいささか気の毒な舞台だったといえる。とにかくクドカンの作家性は強烈に発揮されているものの、演じてオイシイ役者とそうでない役者とに落差がありすぎるのも難点で、ひょっとしたら上演時間の都合上どこかを大幅にカットしたんだろうか?と疑うくらい、登場だけして意味なく消えてしまう役があったりするのである。オイシイのは主役のカップル染五郎と七之助、ヘンな役でさらえる三津五郎くらいだろうか。勘三郎もさほどオイシイ部類とはいえず、福助、橋之助に至ってはおいしくなさすぎてちょっと気の毒である。個人的には序幕がけっこう面白かったので、もっとハチャメチャな展開になるかと期待して観たのだけれど、妙に理に落ちてしまったのが残念というべきか。ただし、ほぼ全員ゾンビに扮した役者たちの奮闘ぶりには、皆さんよくやった!と拍手を送りたい。その一方でそもそもクドカンの作家性を考えた時に、歌舞伎座とは相容れないものがあることを見抜けなかった制作サイドの責任も、金を払って見ている一観客として問いたい気がした。
「野田版研辰の討たれ」以降、一連の新作歌舞伎を観てきたところ、ワタシ的には同じく野田作品の「鼠小僧」と三谷幸喜の「決闘!高田馬場」が成功作と認められるも、正直あとはどうも感心しない。クドカンよりもむしろ井上ひでのり&中島かずきのコンビに依頼したほうが歌舞伎で上演しやすい作品ができるだろうし、三谷に依頼すれば、役者のだれもが演じてオイシイはめ書きをしてもらえるはずなのに、両者に依頼しないのもフシギでならない。一体君らはホンを読んだり、劇作家の質を見極める能力があるのか?と言いたいくらいである。ともあれ歌舞伎に新作は絶対に必要で、それは役者が役者としての資質を喪わないようにするためにも必要だし(でないと単にお稽古事をしてる人になってしまいます)、一方で時代に合わなくて上演できなくなるレパートリーがどんどん増えていくからで、今後も懲りずにソトの劇作家や演出家とタッグを組むチャレンジは続けてほしいものである。
昼の部はほかに勘三郎と三津五郎が組んだ「身替座禅」があまりふざけすぎずに、きっちりとしかも面白く演じてそこそこ見応えがあった。福助と孝太郎が共演の「野崎村」はふたり共にお光がニンの役者であることを感じさせたと同時に、お染役者の不在という現状をも強く意識させられてしまった。「操り三番」の勘太郎と松也を見て、ああ、ふたりともお父さんによく似てきたなあ~と思いながら、ああ、自分も年を取ったもんだと思わざるを得ませんでした(苦笑)。
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コメント (1)
三谷さんは『決闘!高田馬場』で成功し、三谷歌舞伎第二弾の約束をしていますが、自分の資質が大劇場向けではないということで歌舞伎座ではやる気はあまりないようです。いのうえ×中島もいずれはやるでしょう。いずれにせよ、この三谷もいのうえ×中島も染五郎が押さえてますから、若高麗が歌舞伎座で座頭ができるようになるまでお預けかもしれません。長塚圭司も海老蔵より染五郎を使ってやりたがっているとのウワサも聞きました。プロデュース能力という部分では若高麗はなかなか良いものを持っている気がします。
投稿者 詔子 : 2009年12月08日 09:34