トップページ > 1月16日の怪

2008年01月17日

1月16日の怪

この日は朝から「クロワッサン」の着物ページの取材で目白の蕉雨園に行き、まずここの入り口が全くわからず右往左往してなんとか中に入り、そこから別に女優でもタレントでもない私がばっちりヘアメイクと着付けをされて撮影されたところからしてフシギといえばフシギなのであるが(笑)、これはまあ副編集長の船山さんと懇意なのでお引き受けたお仕事だった。で、クロワッサンを発行するマガジンハウス社と歌舞伎座が至近距離なので、ついでにロケバスに乗っけてもらって1月興行の「助六」を見ておこうと思ったのは、N賞受賞の際に市川團十郎さんにお祝いを頂戴したり、パーティーに来て戴いた御礼もかねてのことだった。
 客席に入ってすぐ目に付いたのは、長年講座を受け持っている「花の会」の会主、池田孝子さんで、この日はなんとたまたま「助六」のバックに流れる河東節の立唄(リードヴォーカル)を務める日に当たっており、ロビーでは「花の会」のメンバーと何人もお目にかかった。河東節は昔から素人のいわゆるごひいき連が演奏するものと決まっており、これもたまたま河東節に興味を持っていた女性編集者と会って帰りに食事を共にした。
 肝腎の「助六」は、揚巻役の福助が、化粧を似せているのか亡き歌右衛門を彷彿とさせる一瞬もあって、まずまずの出来だったが、最初の花道の出がなんとも小さいのは、酔態をリアルに見せすぎるためだろう。続く「悪態の初音」もこれまたリアルに過ぎて、わかりやすい分、風格の大きさにかけるのは如何ともしがたい。下手でもいいからもっと歌舞伎座の舞台にふさわしい大きな役者になりなさい、と、亡き伯父様なら仰言るのではないか。ただこの人にしては神妙に務めて嫌みは少しもなかったので、今後を大いに期待したいものである。
 團十郎は颯爽とした助六ではないが、この人らしい稚気横溢としたまろやかな味わいで芸の年輪を感じさせた。やはり長く舞台に立ち続けてほしい人である。
 「河東裃、外記袴、半田羽織に義太股引、豊後かわいや丸裸」なんていう文句があるの知ってる?と、私は終演後に食事を共にした編集者にとくとくと語って聞かせたりして時間が遅くなり、帰りはタクシーで途中までご一緒して、あっ!と気づいたときには真っ青になった。私は蕉雨園で着替えた洋服を撮影に同行したスラッシュの進藤さんに預けたのだが、なんとコートの中に家の鍵とケータイを入れたままにしてあったのだ(--);
今やすべての連絡先はケータイに記憶させているから最近引っ越したばかりの進藤さんには連絡がつかず、唯一記憶してる近所の大島さんも大阪に出張中、万策尽きたところで、いくら女性でもその編集者の家に転がり込むわけにもいかず、すぐに近くのホテルに電話を入れてもらって、ふつうならゼ〜ッタイに泊まるはずのない渋谷セルリアンタワーホテル36Fの高級シングルで一夜を明かすはめになったのであります(涙)。


このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kesako.jp/cgi-bin/mt/mt-tb_kesako2.cgi/660

コメント (2)


昨年末の「和楽」を読ませて頂いて今朝子さんのHPがあることを知り、楽しく拝見させて頂いています。
 歌舞伎の事は詳しくありませんが、生意気にも初めて投稿しちゃいます。
 いつもご活躍、心より応援しています。あ、私は今朝子さんのご実家で勉強させていただいた多治見のかんちゃんです。
益々のご活躍を祈っております。

 ※ 意味のないコメントですみませんでした。

投稿者 かんちゃん : 2008年01月18日 00:26

>かんちゃんへ
今年はまた6月に川上のOB会がありそうなので、お目にかかれたら幸いです。

投稿者 今朝子 : 2008年01月19日 00:11

コメントしてください




ログイン情報を記憶しますか?


確認ボタンをクリックして、コメントの内容をご確認の上、投稿をお願いします。


【迷惑コメントについて】
・他サイトへ誘導するためのリンク、存在しないメールアドレス、 フリーメールアドレス、不適切なURL、不適切な言葉が記述されていると コメントが表示されず自動削除される可能性があります。