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2008年01月15日

焼き豆腐

QPで見た料理。豆腐に切れ込みを入れて、中に長ネギの小口切りを詰め込んでから衣をつけてフライパンで全面まんべんなく焼いて、味醂と醤油の簡単な味付けで、仕上げにおかかをまぶす。片栗粉と溶き卵でしっかり衣をつけて、弱火でじっくり火を通すのがポイント。付け野菜は小松菜の塩炒め。安上がりでけっこう美味しいのでオススメする。
食後にNHKの「プロフェッショナル」で坂東玉三郎を見ながら、ああ、やっぱりこの人も年を取ったなあ……と感慨深いものがあった。もっとも50代後半としては、今でも十分に若々しいのはいうまでもない。
玉三郎さんと初めてお会いしたのは私が高校生の頃だから、向こうはまだ二十代に入ったばかりである。日本画家の山口華楊師を会長とした彼の京都後援会がわが実家の「川上」で発会した関係で、以来しばらく東京の歌舞伎座のチケットは彼の番頭さんを通じて取ってもらったり、楽屋に何度も押しかけたりして、むろん私は六代目中村歌右衛門が大本命のごひいきだったのだけれど、玉サンにも浮気をしていた(笑)というよりも、歌右衛門のあとを継いで、女形の天下を取るのはこの人に間違いないと思って高校生の頃から楽屋に入り浸ったのである。その後お仕事でインタビューをしたら、向こうもしっかり憶えていて、以来ご指名で何度かインタビューをさせてもらったことがある。もう時効だからいいと思うが、かつては梨園の中で何かと苦労が多かったらしく、一度お会いしたときはもう歌舞伎なんかやってられないというような発言がぽろっと出たことがあり、翌日すぐまた呼びだされて昨日の話は絶対に書いてくれるなといわれて、もちろんこっちはバラすつもりなぞ毛頭ないと応じたのである。
それからまた何年かたって『ぴあ歌舞伎ワンダーランド』のインタビューでお会いしたときは、すでに絶頂期に突入しており、「松井さん、私も楽になったわよ」と言われたので、「もう歌舞伎をおやめになる気はないでしょう?」と訊いたら「私が歌舞伎をやめるときは、すべてをやめるときよ」と即答されたのが、今でも耳に残っている。


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コメント (4)


私もプレフェッショナルを見ました。でも、少しでしたけど。
玉三郎、昔から大好きで、特に孝夫、今の仁左衛門とのペアが最高でした。ほんとに泉鏡花の世界を具現化し得ると言ったらいいのでしょうか、うっとししました。
もちろん、今も好きです。
でも、確かにある時期から「ああ、玉三郎も年を取るのだ」とちょっと寂しく思うことがありました。
背中が華奢でなくなってしまうのですね、背中が年を取ってしまう・・・
かつて、若く光り輝いていた玉三郎を、三島由紀夫が絶賛して、世阿弥の文を借りて書いていました。
時分の花として、これほどの美しさがあっただろうか、みたいなことを言ってたような。うろ覚えです。

投稿者 虎ファン : 2008年01月16日 20:15

はじめまして。貴重なお話をありがとうございます。特に玉三郎の舞台が好きな者です。昨夜のこの番組も観ました。彼が20台の頃のお染めの南座のチケットを持っているのに全然覚えていないのです。90年代に海外でオペラやミュージカル観てから玉三郎の鷺娘を御園座で鑑賞し、これこそオペラでも何でも負けない日本の宝と思いました。

「私が歌舞伎をやめるときは」の言葉に感銘受けます。若い時、周囲からねたみで嫌がらせうけた時の反応を何かで読みました。それでも芯の強さ感じました。

投稿者 hitomi : 2008年01月16日 22:35

「ぴあ歌舞伎ワンダーランド」、私にとって素晴しい歌舞伎の手引書で、今でも時々開きますが、松井さん監修という事をすっかり忘れていました。
私が歌舞伎を見始めたのは6年前で、舞台を観てるうちに知りたい事が続々と出て来て、人に聞いてもよく分らない事も多く、疑問や謎が貯まる一方でした。歌舞伎関係の本を色々買い込みましたが、この「ぴあ歌舞伎」を古本屋で見つけたら、内容の充実度が尋常ではなく、知りたい事がびっしり詰まっていて、かなりの謎が解決しました。そしてうれしい事に、カラー写真も小さいながら沢山入っており、イラストや図解も分り易く、説明も現代に即しており、私が一番興味のある衣裳や顔、鬘の詳細、キャラクター別の分類、歌舞伎特有の言葉、時間やお金など江戸の基礎知識、等々、こんなにびっしり盛り込んで、さぞかし編集は骨が折れただろう、と思っていました。しかも、素人の私が言うのも僭越ながら、写真の選択が的確で、見たい部分がはっきり分るので、小さくても満足です(但し、俊寛の写真はちょっと……)。
チャート式占いやら、遊びもたっぷり入って笑えるし、歌舞伎関連スポットやお店紹介など、いたれりつくせりが、細かい活字でびっしり詰まっていて、今開いても、何かしら新しい発見があり、これがたった千円とは、何ともお得な掘り出し物でした。その後、歌舞伎仲間も出来て、私より以前から見てる人ばかりでしたが、この本を見せたら、欲しがる人が何人もいて、その後も見つける度に買って上げて、自分の他に3冊は買ったはずです。1991年発行とあり、冒頭インタビューの玉三郎の若々しい写真で、17年の歳月を感じました。
今回、改めて見直しまたが、「あなたの歌舞伎道チャート」という欄で「爬虫類を飼っている」という項目があるのに気づきました(笑)。この頃は、まだ俊寛サマはいらっしゃらなかったのでしょうが……。

投稿者 ウサコの母 : 2008年01月16日 22:54

 小児麻痺という病歴自体はうっすら記憶がある話でしたが、それを足袋の内に忍ばせる映像を見て、この人は役者として女形として、ここまで明らかにするのかと衝撃を受けました。美しさは強さであり、強いということは気高いものだと感じました。歌舞伎というよりも、徹底した美意識に強いらているように、舞踏家として透徹した意識を持ち続けている訳の一端が窺えた番組でした。恐らくこれからの歌舞伎には現われ得ないクールな存在、ひとり孤高の歌を唄い続けるであろう彼を誰が理解できるのだろうかと思うと胸が一杯になります。
 2月の大阪の舞台を噛み締めて拝見するつもりです。

投稿者 淳之 : 2008年01月16日 22:59

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