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2008年01月05日

聖護院大根の揚げ出し、海老芋のコロッケ、牡蠣のグラタン、土鍋ごはん他

 4日の夜はスラッシュの守部さんとシアター・コクーンで「キル」を見た帰りに近くの日本料理店「春秋」で食事。
 野田秀樹の数ある作品の中でも「キル」はスケール感のある筋立てがコンパクトにまとめられ、野田お得意の地口(じぐち)による連想を活かしたセリフも冴え渡り、父と子という存在自体の葛藤を軸にして、権力の構造にまで斬り込んだスケール感のある秀作で、初演は見逃したものの、再演では非常に心地よく酔わせられた覚えがあるので、今回の三演はいっそ見送ろうという気でいたのだが、主演の妻夫木聡が実に良いという評判を聞いて駆けつけたのである。
前回の主演堤真一は主人公テムジンのワイルドさを全面に押し出して、英雄になろうとしてなりきれない男の哀感を存分に漂わせた好演だったし、ことにセリフの点では妻夫木に勝ち目は全然なかったけれど、それでもこの役はひょっとしたら妻夫木のほうが合っているのかもしれないと思わせたのは、彼の存在から少年のナイーブさといったものが匂い立つからだろう。そのことで父と子の葛藤がより鮮明なモチーフとして浮かびあがったところに、今回の上演の意義は大いにあったといわなくてはならない。セリフはやや頼りないが、ともかく純粋な目の輝きで惹きつけるし、花がある役者だから今後も舞台を大いに期待したいものである。
 共演の広末涼子はとにかく見た目が美しいし、別にへたくそで困るというわけではないけれど、演技にインパクトがないので相手役としての存在感が希薄なのは如何ともしがたく、勝村政信を除いて他の脇役陣もいささか精彩を欠いており、結果、妻夫木の主演起用が今回一番のヒットだろう。ただ役者としての野田秀樹が頗るいいのも特筆しておく。


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