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2007年12月21日
美々卯のうどんスキ
今日は年内最後出張で、午前中に京都入りして、午後一で17代目永楽善五郎師とご自宅で対談をした。これは表千家家元の古希記念展示会が来春早々に高島屋で開催されるに当たってのイベントで、一応表千家に入門している私としてはお断りもしづらいし、永楽さんのご自宅とわが実家はご近所で、当代の善五郎師とは何度かお目にかかったものの、きちんとお話をしたことはまだ一度もないので、これを機に何かとお話が伺えたらありがたいという気持ちもあったのである。
茶道を嗜む方には説明不要かと思うが、永楽善五郎は千家十職のひとりである。千家十職とは茶釜や茶碗やその他もろもろの茶の湯に関わる道具を十人で手分けして作っている職人集団で、家元が代々世襲されるように十職も代々世襲で続いており、いわば家元を王と仰ぐ騎士団のような存在なのだが、今どき天皇家でも公然とこうした関係はないはずで、世界でもあまり類例をみない特殊な立場の人びとである。当代の善五郎師もその特殊性を十分意識なさってはいるようで「他国では聞いたことありませんが、タイの王室の周りにはちょっと似たような感じの人たちがいるそうですわ」と仰言った。で、その十職の人びとは、家元のために茶道具を作るのがメインの仕事で、その合間に作った品を他の人にお裾分けする、といった感じなのかどうかは知らず、永楽さんの作品を一般人が買い求めたら一つあたりン十万はおろか、ン百万!するものが少なくないのだった。
そんな方をつかまえて、「こういう家の跡継ぎになるのはイヤだと思ったことありませんか?」とか、「子供のころ、お父さんが焼いたお茶碗をうっかり割って叱られたことあります?」とか、「失敗したお茶碗は、その場で叩き割ったりするんでしょうか?」とか、私はここぞとばかりおバカな質問を浴びせたが(笑)、全部きちんと丁寧にお答え戴いた。とても親切でやさしいお人柄なのである。
とにかく特殊な家に生まれ育った方ではあるが、ご自身は若いころ東京芸大で日本画を学び、釉薬のさまざまなデータを取って、それを元にまず90%は仕上がりが予想できるという極めて合理的な製作方法を取っておられるし、焼物にする土の仕入れ方法や、意匠の考案に関わること、家元と日頃どんなふうに付き合っているのか等々、極めて貴重な話を面白く聞かせてもらった上で、茶道においては伝統の中に自らの個性を打ち出していくことがいかに重要なのかを、私は改めて認識させられたのである。
対談終了後、ひとまず実家に立ち寄ったが、なにせ年末の決算時でてんてこまいだから親とゆっくり話もできす、早々に退散して、同行したスラッシュの進藤さんと一緒に「美々卯」で食事をして引き揚げました。
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コメント (2)
松井さんも表千家さんでしたか。もう30年くらい前に四方棚までお稽古して、それから私ははたまにしかお稽古していませんが、時間が急く中、ずっと続けておられるのですね。
お茶を立てる、頂く、時間は止まって何よりも「癒し」だと思うので、叉お稽古したくなりました。
楽善五郎氏に松井さんがお尋ねになった事、私も訊いて見たかった事です(^o^)
投稿者 お : 2007年12月22日 21:55
>私も訊いて見たかった事です(^o^)
家を継ぐのがイヤだと思ったことはないそうです。
子供の頃にお茶碗を割ったこともないそうです。
失敗作はその場ではなく、ある程度たまったところでまとめて割るそうです(笑)。
投稿者 今朝子 : 2007年12月22日 23:13