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2007年11月17日

刺身、鶏のつくね、おでん他

  旧友のモリと近所の「だいこんや」で食事。モリは現在米国勤務の外交官夫人だが、娘が慶応に入学したのでたびたび帰国するようになった。今日は米国でゲットしたというプレゼントを頂戴し、そこからたまたまガラパゴスに旅行した話になり、米国の入国審査で非常に不愉快な目に遭わされたと文句を言ったら、「そんなの当たり前よ。外交官でも靴を脱がされて、入念にボディチェックされちゃうのよ。あたしのトランクも勝手に開けられてむちゃくちゃにされちゃったし」と聞いてビックリ!それってあんまりで、なんだか人種サベツが匂う気もするのだった。
モリが帰国して一番驚いたニュースはネットカフェ難民に代表されるワーキングプア問題で、「勿論アメリカにも貧しい人たちは山ほどいるけど、問題がゼンゼン別だと思う。ごく普通の人たちがまともに働いてるのに、あんな風に住む場所がないなんてアメリカじゃ絶対あり得ない。今の日本はどこかおかしいのよ!」と断言したのが印象的だ。
 ところで私が最近見た中では防衛省問題にしろ何にしろ驚くべきニュースはいろいろあるけれど、今日7時のNHKニュースを見てショックだったのは「吉兆」に家宅捜査が入ったことで、よく歌舞伎座でお見かけした亡き湯木貞一さんの姿が想い出されて胸が痛んだ。「吉兆」が狙い撃ちされたのはやはり対応のまずさが一番の原因だろうし、創業者がいくら立派でも2代目3代目はこんなにアホになるという格好の見本で、血族世襲が全くあてにならないシステムだという事実を証明してみせたようなものである。とかく血族世襲嫌いの私にとっては、つい先日の国立劇場で見た箸にも棒にもかからない某御曹司と並んで、表彰してあげたいくらいのお値打ちものだといえる。
 「料理屋と屏風は広げたら倒れる」という言葉があるのは子どもの頃から知ってたし、料理屋がまともな経営をすれば如何に儲からない商売であるかは身に沁みてわかっている。デパ地下に大きな看板を掲げてマダムのブランド志向を刺激する老舗名店の多くは、実のところ銀行や大企業が相当に介入し、創業者系の経営者は一円たりとも自由に動かせないお飾りらしいという話もよく聞いており、「吉兆」もすでにかなり以前から松下かどこかの紐付きになったとの噂を耳にしたことがある。銀行や大企業がバックに入れば当然ながら儲けを優先するシステムにさせられて、味は二の次三の次になるのは必至で、この手のことは何も「吉兆」に限った話では全然なくて、近年東京に進出した某名店の実情がどれほどひどいものかという話も小耳にはさんでいる。日本料理店に限らず、優れたシェフが一代で味の信用を築き上げたフレンチ名店の多くも、巨大化するにつれてあっという間に惨憺たるありさまとなってしまった。巨大化するには当然金がかかり、自己資金でまかなえない分を補填してもらうつもりが、結局は軒を貸して母屋を取られるはめにもなるのだろう。わが実家の「川上」はとてもちっぽけな店で今や外観も相当にひどいのでもう少しなんとかしたほうがいいのだろうけど、あくまで主人がこだわる味をキープするために外の資金を入れずにギリギリ保ちこたえた結果なのだから、まあ、あれで仕方がないともいえるのだった。
ひとりの料理人が目を配り気を配り心を配る範囲は限られている。限られた範囲の中でしか本当に美味しいものは食べられない。美味しいものを大量生産するというのは厳密にはあり得ない理屈だし、その意味で食のブランドは今後根本的に問い直されることになるかもしれない。


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コメント (3)


我が家も食べ物商売をしてるので昨今の「吉兆」さんの事は胸の痛い話しです。先代が生きてる時に高島屋さんから出店の話が来たとき「息子が二人居たら(主人は一人っ子)考えまひょ。一人では目が行き届きまへん」とお断りしてたのを覚えてます。因みに舅は「食べもん屋とでんぼ(おでき)は大きなったらつぶれる」と云うてました(笑)
先日来書いてある某御曹司は顔見せにも出るのでは・・・それも親子揃って(涙)私の回りも前々から同じ意見です。

投稿者 ともちん : 2007年11月17日 15:45

ともちんさん、私も祖父からよく同じ言葉「でんぼと食い物屋は大きなったら潰れる」と聞かされてました。「店を広げにかかったら味は落ちる」とも。湯木貞一さん「暮らしの手帖」でよく執筆されていましたのを楽しみに読んでましたから、ホンマニ今回の事は残念です。血属の継承を優先された結果なのでしょうね。
血族の継承を重んじる歌舞伎の世界も変わらなければ行けないのでしょう。松嶋屋さんファンとしましても某御曹司は早く見極められた方が良いのでは?と思います。顔見世の入場料が半端なお値段では無いので、見に行く者としては「やめてーな」と思います。

投稿者 おゆき : 2007年11月17日 23:45

 15日の見に行きました。源氏物語の人形は興味を引かれましたが、司会のセンセイは時間もオーバーしちゃったり、聞いてる方もちょっと困っちゃいました ^^; 司会者は時間オーバーでお客さんが出て行くのを見たら、機転を利かせるべきだったと思います。
 ご実家が料亭なので今回の船場吉兆の件は気になること、お察しがつきます。今年は不二家(あそこも親族系でしたね)にはじまり、偽装の話が尽きませんね。
 マクドナルドみたいにどこでも食べられるのもそれはそれでいいですが、高いブランドがある料理店では「ここでしか食べられない」「そこに行って食べる」という限定性に意義があるのだと思います。本物だったら自分から広げようと思わなくても、周りが自分に向かってくるのでしょうね。

投稿者 神無月 正美 : 2007年11月21日 18:11

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