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2007年03月24日

鯨の刺身、鯨の竜田揚げ、ハリハリ鍋

幻冬舎のヒメと渋谷のシネクィントで蜷川実花監督の『さくらん』を観たあと「くじら屋」で食事。
 『さくらん』はもう少しマイナーな作りの映画かと思って見たが、どうしてどうして立派なエンターテイメントとして仕上げられた良い意味で予想を裏切る快作だ。前半は原作のマンガをほぼ忠実に再現して、マンガならではのギャグっぽいシーンを織り混ぜながら、押さえるべきところはきっちり押さえた撮り方をしている。とにかく衣裳セット共に赤と青の原色をメイントーンにしてド派手でキッチュな色遣いをして一歩間違えば完全に悪趣味になるところが暗い背景と組み合わせた構図の巧さでみごとに救われており、そこらあたりはさすがに写真家出身監督の腕の冴えというべきだろうか。吉原の花魁をガラス鉢の金魚に見立てた映像はややストレートに過ぎる比喩だが、かつての鈴木清順を彷彿とさせるシーンでもあった。
 主人公の花魁はとにかく男にモテまくってやたらに貢がせてる今どきの女の子と二重写しで描かれていて(花魁の衣裳がシャネル調だったりするのがおかしい!)、そんな女の子にも実は内心とても純なところがあり、最後は純な気持ちを貫いて自分なりの幸せをつかむという、如何にも少女マンガ的なロマンに基づく心地良いハッピーエンドが訪れるが、こうした映画をウソでなく撮れるのはやはり若い女性監督ならではだろう。全体に室内中心の暗い映像が一転パアーと明るくなるラストシーンには生理的快感がある。椎名林檎の曲の入れ方もいいし、キャスティングも隅々まで行き届いている。主役の土屋アンナは相当にバタ臭い顔で、江戸時代にこんな顔をした花魁が実際にいて且つ男にもてたはずは決してないのだけれど、現代女性のある種の典型とそのロマンを体現するという意味ではスタイリッシュな彼女の容貌がぴったりはまっていたし、女性から見て好感が持てる。映画全体として見たとき、これは別に吉原を舞台にした時代劇映画ではないし、ノリとして近いのはニコール・キッドマン主演の『ムーラン・ルージュ』かなあ?という気がした。


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