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2007年03月08日

鉄板焼き

 7日夜は新潮社の小林姐さん、以前の担当だった佐野氏、現単行本担当の田中氏、新たな文庫本担当の青木氏が大量!の食材と酒ご持参でわが家を訪れ、新刊の相談かたがた会食と相成った。
 「銀座開化事件帖シリーズ」第2弾のまず刊行時期をどうするかの相談で、新潮社サイドは第1弾の文庫本化と連動させてどうしても今秋にしたいという意向だが、今秋は角川事務所が「並木拍子郎シリーズ」第3弾を、講談社が『そろそろ旅に』の単行本を出したいとの話がすでにあって、ただでさえ立て込んでいるから無理だといっても、新潮社サイドは一向に譲らぬ構えである(笑)。こうなるともう私の一存では決めかねると言ったところ、佐野氏が両出版社の担当者と直に話し合って調整をすることになった。というわけでこっちは調整の成りゆきを見守るしかない。
 ところで出版社と作家との関係は部外者の目で見るとけっこうフシギなもので、歌舞伎役者と興行会社「松竹」との関係を長年見てきた私にとって、まず一番大きく違う点は、当たり前だが、出版社が沢山あるということだ(笑)。で、これも当たり前だが、役者は同時に色んな場所にいられないから、以前某狂言役者がヘリコブターに乗ってかけ持ちした事件があったことでもおわかりの通り、ダブルブッキングは絶対に避けなくてはならない。片や作家の場合は本人がそこに居る必要は全くないから、同時に色んな仕事を進行して別にOKだけれど、却ってどういう順番でするかについてはけっこう頭を悩ませる方が多いだろうと思う。
 役者は一応話が来た順番に仕事をするのが鉄則で、あとから来た話がその前に来た話よりはるかに有利であっても、前の話を蹴って有利なあとの仕事を選択するのは非常識として業界から爪弾きされる。たった1日の仕事のために、ひと月働けるチャンスを逃して泣いた役者の話はいくらも聞いた。TVや映画でもこれは同じで、従って自分ではとても調整がつかないから、役者は大概マネージャーを抱えたり、プロダクションに属しているのである。
 いっぽう作家の場合は話の来た順番に仕事をする鉄則というものはどうやらないようで、私は初期のころPHPとお付き合いして、その間に講談社で時代小説大賞なるものを頂戴したときに、講談社サイドの仕事を優先するように言われて面くらい、私の感覚だとそんな非常識な真似はできないので、PHPの仕事を優先した。以来、仕事は来た順番にやるという私なりの原則を通しており、なぜならどの出版社から本を出すほうが有利かなんて考えるのも面倒くさいし、そもそも出版界全体がタイタニック状態の今どきはどこで本を出してもそうたいして変わらないと思えるからであります(笑)。
 で、以前PHPが先か講談社が先かで揉めたときも、最終的にはPHPの担当者と講談社の担当者の話し合いで決着したが、作家不在で出版社同士が話し合うというのもこの業界ならではの仕組みのようで、担当者同士は大概知り合いであることが多いらしい。
 漫画家さんの場合はたいて1社専属のようなかたちで仕事をなさってるようだが、昔はともかく今の作家は大概何社とも付き合いがあるし、担当編集者もある意味ではライバルになるのだけれど、一方ではお互いに手を取り合って大勢の作家を囲うかたちを取っているらしい。以前、某社のとても正直な編集者が「要は編集者同士が手をつないで生け簀を作って、そこで魚を飼ってるようなもんなんですよね」と私に洩らして、なるほど!と大いに納得したのであります(笑)。


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コメント (2)


NHKの朝の連続ドラマ(お昼に見てますが)で只今「田辺聖子」さんをモデルに藤山直美さんが主演でやってるのを見てます。作家さんと編集者さんの係わり、駆け引きをチッラと垣間見てます。
仕事の内容は全然違いますが、家業も完全予約制なので楽な部分も有りますが、どうしようも無い時が有ります。因みに舅が亡くなった時は、踊りの会の300人前を聞いててやっさもっさしました。
先約順を守ってます。今朝子先生の御実家もそうだと思いますが、出来るキャパは限られてますから。
一寸無理はしますが、絶対無理は絶対しません。

投稿者 ともちん : 2007年03月08日 16:45

>ともちんさんへ

>一寸無理はしますが、絶対無理は絶対しません。

本当に仰言る通りです。どんな稼業であれ、それが良心的に仕事するための基本だと思います。

投稿者 今朝子 : 2007年03月08日 20:26

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