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2006年08月08日

刺身盛り合わせ、高菜ご飯ほか

 紀伊国屋ホールで井上ひさし作「紙屋町さくらホテル」を見た帰りに文春の内山さんと近所で食事。
井上ひさし近年の傑作とされているこの作品を私はうっかり見逃していて、なんと今回初めて拝見した次第。で、初演の豪華メンバーからすればかなり小粒な座組だろうが、出演陣は皆それなりに奮闘好演の部類だと思う。ことに「早稲新」時代から知ってる久保酎なんかは、老け役でこんなにとぼけた味が出せる役者になったのか!と感慨深いものがあった。
 戯曲自体は恐らく初演メンバーの豪華さを反映してのことだとは思うが、やや盛りだくさんの印象は否めない。巡業中に広島で原爆の犠牲になった新劇俳優丸山定夫と元宝塚女優の園井恵子の一座をめぐる話の中に、戦時中における日系アメリカ人が置かれた立場の問題、終戦の決定が遅れたことに対する天皇と周囲の責任問題など、一本でも大きく扱えるテーマが何本も立っているので、ちょっと拡散した感じの芝居である。ただ面白いのは素人を劇団員に仕立てた設定で行われる劇中稽古で、各人がしろうとの棒読み段階から徐々に演劇性に目覚めていくさまを見せながら、築地小劇場の様相に言及するメタシアター的要素をからめつつ、演劇に対するオマージュを全面に打ち出した点だろう。まさに新国立劇場のこけら落としにふさわしい御祝儀戯曲だったということを、今回初めて知った私である。


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