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2006年05月17日

ハマチのタルタル、シマ海老のカッペリーニ、花ズッキーニのフリット、白金豚のグリルほか

 集英社の八代さん、栗原さん、伊藤さん、スラッシュの進藤さんと「クッチーナ」で食事。ここは三茶界隈のイタ飯ではオススメの店です。
 集英社の方と久々に会食をしたのは何を隠そう去年同社で上梓した「家、家にあらず」が推理作家協会賞にノミネートされ、今日が選考会だったからである。めでたく落選したのだが、そもそもこの賞に関してはノミネート段階で???でもなんだか妙に嬉しい気もしたのだった。
 現在一応ジャンルとしては時代小説と呼ばれるものを書いているが、私は昔から今日に至るまで他人様の時代小説は全くといってもいいほど読んでいない人間で(池波1冊、藤沢1冊くらい)、自分が娯楽として読むのは専らミステリー(主に海外物)である。そんなわけで日本ミステリー界で権威があるというこの賞にノミネートされたときはミーハー的に喜んでしまった。
 でもなぜ私が……と、やはり不思議いっぱいで、そりゃ万が一獲れたら嬉しいけどゼッタイ獲れそうもない賞を待つ身というのは実に気楽なものである。協会の方(女性)に決定のお電話を頂戴し、最後に「またよろしくお願いしまーす」と言われたときは、こちらも軽いノリで「どーもー、またよろしくー」てな感じでお答えした。
 今までこの手の電話は何度か頂戴しているが、今回は女性の声が明るかったので助かったし、好感が持てた。まるで弔問電話のような暗い声でかけてこられると、おいおい、そんな大事なのかよ!と肚の中では思いながらも神妙にお答えするのに骨が折れます(笑)。
  私はもともと文芸の世界には疎い人間だったので、この業界に入って「賞」というものがこんなに沢山あることにまずびっくりし、ほかの作家の方とは付き合いがないのでよくわからないが、少なくとも編集者の方々が皆さん結構真剣に打ち込んでおられることにもまた驚きを禁じ得なかったのである。このブログの読者はこうした文芸出版界の事情をあまりご存知ない方も大勢おられると思うので、敢えて野次馬ウォッチング風にそのことを記しておく。
 まず賞には特定の出版社がバックについている賞(私はヒモツキの賞と呼んでいます)とそうでないものとがあるようで、今回の推理作家協会賞はどうやらヒモツキではないらしい。
 ヒモツキで一般の人に一番よく知られているのが芥川賞と直木賞だと思うが、このバックは文藝春秋社で、大勢の評論家が下読みした中から社員30名が最終候補作を選出し、そこから作家の選考委員に選ばせるシシテムなのだと聞いた。
 これは候補になった段階で世間に告知するので、候補にされるとある意味で迷惑な賞とはいえ、世間的な認知度は高くなるから、候補にしてやっただけでも有り難く思えという感じがぷんぷん臭って、野次馬的にいうと面白い。要は文藝春秋社の戦略に踊らされた(笑)皆さんが本を買ってしまうのがいけないのだけれど(これって松竹の襲名興行に高い料金を払う愚かな観客の感じによく似ています)、そりゃ本が売れるにこしたことはないから、他社が便乗して目指せA賞N賞!となり、多くの作家も目の色を変えてしまうようである。
 しかしながらこの両賞はあくまで新人賞なので、本当はこれを獲った作家のその後を追いかけたほうが遙かに質の高い作品が読めるということを、一般読者に向けてもっと業界はしっかり言うべきではないかと常々思う。もっとも、いっきに売れっ子になって乱作駄作に陥る人も少なくはなさそうなので、一般読者としてはこの手の新人賞のおかげでますます良書のセレクトが難しくなるだけではないかという気もする。この業界に入って私が唯一得をしたのは、今年出版された小説で一番面白かったのは何?とストレートに編集者に訊けることで、まずそれを読んでおけば損した気にはならない。
 文藝春秋社以外のヒモツキ賞で直木賞に相当するものとしては講談社の吉川英治文学新人賞があるが、一般認知度はイマイチで、この事実に対して講談社の某編集者は率直にひがんで、悔しがったものだ(笑)。そのくせ私に目指せ直木賞とストレートに発破をかけたのも同社であり、なんとも正直なところが可愛らしい。
 新潮社には山本周五郎賞というのがあって、これも後発のせいで認知度は不足しているが、新潮社の担当編集者がこの賞に関してどういう思いを抱いているのか、また明確なライバル社と目されるB社のA賞N賞をどう思っているのか、意地悪な業界ウォッチングを楽しんでいる私にさっぱり窺わせないのはおみごとである。そこはさすが<文芸界の岩波>(と私は呼ぶ)である新潮社のプライドというべきなのでしょうか(笑)。
で、私は正直なところ今回のヒモツキでない賞のノミネートにはこれまでになく喜んでいて、集英社の栗ちゃんに、是非シリーズ第3弾でリベンジを目指しましょうと言われたときに、そうだねえと素直に相づちが打てたのでした。


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